乳がんについて
日本における乳がんの頻度は増加の一途をたどっており、現在1年間に約3万6千人の方が乳がんと診断されています(1999年)。罹患率は全国では大腸がんについで第2位です。また乳がんによる死亡も現在日本の女性のがんによる死亡の第4位にあたります。検診による早期乳がんの診断率の向上や、食生活などの生活の欧米化、晩婚に伴う初産年齢の上昇などが原因と考えられています。
乳がんの検査
乳がんをみつけるには、視診(みること)・触診(さわる こと)をはじめ、マンモグラフィー(乳房を押しつぶしてレントゲン写真をとる)や、乳腺エコー検査(超音波を使って乳房内をくまなく検査する)を行う必要があります。当院はマンモグラフィー読影認定施設として、乳がん検診事業に参加しております。乳がん検診については随時行っておりますので、ご相談ください。
乳がんの転移
乳がんは、放っておくとどんどん大きくなり、骨、脳、肺、肝臓などに転移することが知られています。また、がんが小さいうちでも腋窩(わきの下)のリンパ節に転移し、そこをスタート地点としてさまざまなリンパ節に広がっていくといわれています。この、一番最初に転移するわきの下のリンパ節のことをセンチネルリンパ節と呼びます。
乳がんの手術治療
手術方法も年々進歩しており、最近ではなるべく乳房を切らないで治そうという「乳房温存手術」が中心に行われるようになってきました。ただ全ての症例において温存手術ができるわけではなく適応が決まっておりますので、詳しくは担当医までご質問ください。
現在、世界で最も新しい手術の方法ですが、まずわきの下のセンチネルリンパ節を真っ先に取ってきて、がん細胞がいないかどうか手術中に顕微鏡を使って病理医にみてもらいます。これを術中迅速診断といいます。病理医にみてもらっている間に乳房の手術を行い、乳房にあるがんをなるべく小さな範囲で切除します。そして、ちょうど切除が終わったころに病理医からセンチネルリンパ節にがん細胞の転移があったか、なかったかの報告をしてもらいます。ここで、転移があった場合にはわきの下のリンパ節を多めに切り取ってきます。これを郭清(かくせい)といいます。他に転移があったら困るので、転移の可能性があるリンパ節を全て取り去ってしまおうという狙いです。顕微鏡の検査でセンチネルリンパ節にがん細胞がなかった場合、手術は終了となります。
手術が終わったからといって、治療が終了という訳ではありません。一定期間、抗がん剤・ホルモン剤の内服や、放射線を当てる治療が必要となります。この、放射線治療は放射線科医が行うもので、術後約5週間通院していただくのが一般的です。「5年生存率」という言葉をご存知の方も多いと思いますが、これは手術をしてから5年間生存している人の割合のことです。通常のがんでは予後の指標として5年生存率を使いますが、乳がんの場合は他のがんに比べて予後が良いとされているため、「10年生存率」というものを指標としています。手術、抗がん剤・ホルモン剤、放射線治療など全て終わっても、10年間は再発・転移の可能性がありますので、定期的に検査を受ける必要があります。